柔らかな朝日が降り注ぐ時間に咲くアサガオは、夏の涼しげな花の中でも特に知られています。この花は、江戸時代には非常に人気があり、さまざまな新種が生み出されるほどでした。例えば、東京の入谷にて行われる朝顔市は、夏の風情を感じさせる行事として親しまれています。
学校の授業でアサガオを用いて植物の生態を観察することは、多くの人が経験することです。記憶に新しい、その感慨深いアサガオを、なぜ再び育ててみないでしょうか。日本人ならではのこの植物の成長方法を振り返り、アサガオの花を生活の一部として楽しんでみてはいかがでしょうか。
朝顔栽培のための基礎知識
朝顔は手軽に栽培できる植物でありながら、新しい品種開発の流行を追いかけるという趣味の幅広さをもつ魅力的な花です。
朝顔についての基礎情報
朝顔という名の花には次のような基本的な特徴があります：
- 学名：Ipomoea nil
- 科：ヒルガオ科
- 属：サツマイモ属
- 原生地：熱帯及び亜熱帯地域
- 日本名：朝顔（アサガオ）
- 英語表記：Morning glory
- 花の開く時期：7月から9月にかけて
- 花の色彩：赤やピンク、白、青、紫、複色など
- 種が芽吹くのに好ましい温度：20～25度セルシウス
- 成長するのに適した温度：20～25度セルシュウス
種から朝顔を栽培する場合、5月のゴールデンウィークが終わる頃から6月末にかけてが植え付け時期として最適です。5月を過ぎると苗が市場に出回り始め、早めに植えることで夏の間に涼しげなグリーンカーテンを楽しむことができます。7月中旬、夏至を越える頃には花が次々に咲き誇り、朝顔市で購入した開花済みの鉢植えも、種や苗と同じように10月頃まで鑑賞が可能です。
アサガオ育成のための初期準備
アサガオは鉢での栽培も可能ですし、まっすぐに地面に植えて育てることもできます。育成前の準備品を以下に紹介します。
栽培に必要な物品一覧
- アサガオの種苗
- 植物を這わせる土台となる支柱やネット
- 容器：直径18cmの6号サイズの鉢、または栽培スペースに合わせた横に長いプランター
- 植土
アサガオは自身の茎である蔓を巻きつけることで成長していくため、特に緑のカーテンとして利用する場合はネットを用意することが大事ですし、それ以外であっても適切に星形の支柱が配置される必要があります。
鉢で育てる場合は、6号サイズの鉢や幾株かを同時に育てられるプランターの選定が必要です。また、日当たりを好む植物ですから、育てる環境を整えるにあたり、屋外の植え場所や鉢の位置選びも忘れずに行いましょう。
アサガオ品種の豊富さと選び方
アサガオとひと口に言っても、その品種の種類はさまざまです。主なものに、「大輪アサガオ」、「変化アサガオ」という二大グループが存在します。
「変化アサガオ」の中でも特に、桔梗の花のような形状をしたアサガオは、「キキョウ咲きアサガオ」という特殊な名前で親しまれています。
更にアサガオの仲間には、独特の模様が特徴の「曜白アサガオ」、日中まで花を楽しめる「西洋アサガオ（ソライロアサガオ）」、沖縄原産で別名琉球アサガオとも呼ばれる「ノアサガオ（宿根アサガオ）」などが存在します。
選び方の一助となるよう、種または苗の際に提供されるラベル情報を活用し、ご自身が望む花の形状や特徴を有するアサガオをお選びください。
どの品種も露地植えまたは鉢植えで楽しめますが、特に「大輪アサガオ」や「変化アサガオ」は鉢植えに適しています。また、蔓がしっかり伸びる「曜白アサガオ」、「西洋アサガオ」、「ノアサガオ」は、最近人気の「緑のカーテン」としても最適です。
全て変化朝顔の苗です。
葉も種類があります。
これもその一部です。#変化朝顔 pic.twitter.com/IdbKN4kY9P— うらうら🍀🎨🖌️🎨🖌️🍀 (@urauranoyumi) June 30, 2024
アサガオ育成の基本：土づくりのポイント
アサガオを元気に育て上げるためには、栄養豊富で排水・保水・通気特性に優れた土が理想的です。鉢植えには一般的な草花用の培養土が適していますが、商品によって水の排出や保持能力に差があるため注意が必要です。
もしも土の状態が良くない場合は、堆肥や腐葉土、そして川砂の追加で状態を改善することができます。露地に植える際は、植栽の前に植えるエリアに堆肥や腐葉土を混ぜ込んで土を耕しておくことが大切です。
もし排水が悪かった場合には、川砂をプラスして排水性を高めましょう。自作の土を準備する場合は、赤玉土と腐葉土を6:4で組み合わせる方法か、赤玉土、堆肥、腐葉土を6:2:2の比率で混ぜると良いでしょう。
さらに、アサガオは酸性土を避ける植物なので、苦土石灰を添加してpH調整をしたり、籾殻くん炭を土に混ぜることで、土の質を改善するのに効果的です。どちらの方法をとるにしても、緩効性の肥料を初めに施しておくことを忘れないでください。
アサガオ栽培のコツ
アサガオを育てる際には、種から始めるか苗を用いるかの二つの選択肢があります。初心者やアサガオ栽培が初めての方には、市販されている苗を使用した方が、栽培における失敗を避けやすいです。
アサガオ育成法～苗から育てるコツ～
健康な苗の見分け方
初夏が来ると、ガーデンショップやDIY店のガーデニング売り場に、多種多様なアサガオの苗が店頭に並びます。花の形や色が描かれたラベルがついていることが多く、まずは自分の好みに合わせて選ぶところから始めましょう。
ただし、苗の健全さには個体差があります。当然、害虫やその痕跡、病気による白や黒の斑点がないことは基本中の基本です。他の苗と比較して葉の色が劣っていたり、黄色くなって垂れ下がったり、カールしている苗は選ばないようにしてください。
また、茎が細長くなっているだけで弱々しい苗や、葉と葉の間が異常に開いている苗は「徒長」と言われ、光や栄養が不足していた証拠なので、これらの苗も選択しない方が良いでしょう。
健康な苗は根元がしっかりとして動揺せず、根がしっかり張って丸々としていますので、そうした特徴を持つ苗を選択することが大切です。
苗を手に入れたら、「アサガオとの日々のケア」の項目で後述するように、適切な管理を行っていきます。
こどもと一緒に育ててる朝顔
根が張ってきたのか、成長スピードが上がってきた👍 pic.twitter.com/TfP4fyYclm— tak plants (@takplants88) June 30, 2024
アサガオ栽培指南：種を用いての栽培スタート
種蒔きの適期
アサガオの種を蒔くにあたり、温度は20～25度程度が良い発芽条件を作ります、これは発芽に適した温度といえます。
種を直接土に蒔く場合は、遅霜の恐れがなくなり、土の温度も適温に達した時期を選びましょう。
時期は地域差がありますが、種蒔きは大体ゴールデンウィークが終わった後から6月末の間に行います。
鉢植えで栽培する際には、環境により適した温度を用意できるので、少し早めに種蒔きをすることも可能です。
発芽を促すアドバイス
アサガオの種は硬い殻に守られているため、そのままでは発芽しづらいものです。
種を蒔く前に一晩水に浸し、水分を含ませるか、種の表皮をやすりで軽く削ることにより吸水性を高めると、発芽が促進されます。
最近になって、発芽がしやすいように処理された種も販売されるようになりました。これらの種は概して「発芽処理済み」などとパッケージに記されています。
種まき方法についての詳細
アサガオの種には、自然の中で直接種を播く「直まき」と、初めにポリポット等で種を蒔き、そこから育った健全な苗を植え床に移植する「鉢まき」という二つの方法があります。そのどちらを選ぶ場合でも、用土に対して人差し指を使い２～３箇所穴を開けてそこに種を蒔く「点まき」方式を取り入れます。
種を植える際には、その向きに注意が必要です。アサガオの種は一端が尖っており、その尖った部分を下にして、反対側の丸い部分が上を向くようにして植えます。
なお、アサガオの種は日光を好まない「嫌光性」の特性を持っていますので、種を蒔いた後は種が見え隠れする程度に土をかぶせ、その上から水を充分に与えます。
その後の管理では、発芽するまで土が乾燥しないよう留意しましょう。大体1週間ほどで初めの葉が見えるはずです。発芽した後は、頑強に見える芽を選んで他の芽を間引き、栽培を続けます。
植物を健やかに成長させるために:植え替えのタイミングと手順
種子を土壌に直接蒔く場合はこの手順を省略してもよいですが、ポット植えをした際には、植物の本葉が3～4枚展開した時点で、6～7号サイズの鉢に慎重に移植することが推奨されます。この時、植物の根球を壊さないように特に配慮しましょう。
移植する際には、先に支柱をしっかりと設置しておくことが大切です。また、植物が将来的に緑豊かなカーテンを形成することを目指している場合は、予めトレリスなどの支えとなるネットを用意しておくと良いでしょう。
植え替えを行った後には、水を十分に供給してください。特に鉢植えの場合は、鉢底から水が溢れるくらいまでしっかりと灌水することが重要です。
アサガオを育てることで毎日が豊かに
アサガオが根付いた後、つるが成長してくると、支柱やトレリスを使って誘導する作業が必要になります。
緑豊かなカーテンの演出を目指す際には、本葉が5枚から7枚に達したタイミングで先端の成長点を摘んでやる摘心作業を行います。これは側芽を促して枝を増やし、充実した緑のカーテンを形成させるためです。
アサガオはそのつるが自然と左方向へと伸びる特性を持っています。この性質を理解し、「左回りに」誘導しながら丁寧に巻き付けると良いでしょう。
水やりのタイミング
植物を鉢植えで育てる場合、水を与える基本的な目安は「表土が完全に乾いたら、鉢底から水が漏れる程度にふんだんに」となります。朝早く、太陽が強くなる前の時間帯に水やりを完了させましょう。しかし、気温や環境によっては、朝に与えた水分が昼頃には不足することがあるので、夕方にも追加で水やりを行うことが必要になる場合があります。
逆に、苗木を地植えにした際には、植え付けの際に大量の水を与え、その後は根がしっかりとつくまで、葉がしおれないように気を配ります。一度根が定着すると、長期間の晴天等で土が極度に乾燥しない限り、頻繁に水やりをする必要はほとんどありません。土が乾ききっている状態を見つけたら、水が地面深くまで行き渡るようにしっかりと水やりをしてください。
注意: 直射日光が当たっている場所に置かれたじょうろやホースの中の水は、意外と温度が高くなっていることがあります。水を与える前にその温度を確認する習慣を身につけることが大切です。
植物に適した肥料の選び方
植物栄養には緩効性と速効性の肥料という二つのタイプが存在し、持続力と即効性に大きな違いがあります。肥料成分には、成長に欠かせないチッソ、リン酸、カリが含まれ、これらはそれぞれ植物の葉、実、根の発育をサポートし、「葉肥」「実肥」「根肥」として知られています。
商品に表示されている数値配合（例えば５：１０：５）を見ることで、どの成分がどれだけ含まれているかが分かります。草花にはリン酸を豊富に含んだ肥料が一般的で、逆に観葉植物などの茎や葉を豊かにする場合はチッソを多く含む肥料が適しています。
アサガオの場合、植え付け前には栄養が長期間持続する緩効性肥料を用いますが、花を次々と咲かせる段階ではさらに栄養が要求されます。植え付けから３週間から４週間が経過した段階で、リン酸を多く含む速効性肥料を追肥として与えるのが効果的です。
ただし、肥料は適量を心掛けなければならず、与え過ぎると肥料焼けという問題を引き起こす恐れがあります。特に液体肥料を使う場合は、薄める比率を確認し、正しい方法で施しましょう。アサガオには1000倍に薄めた液肥を月に２〜３回与えるのが好ましいです。固形肥料を置き肥として使用する時には、株の直ぐ傍ではなく、根の張りを想定し葉の広がりの下側辺りに半分程度埋もれるように置くことがポイントです。
アサガオが彩る瞬間
アサガオが美しさを見せる瞬間は、儚くもあります。一般的に「一日花」と称されるアサガオは、開花したその日のうちに彩りを終えるのです。
限られた時間の中で花を愛でることになるものの、アサガオは毎日新しい花を次々と咲かせ、見る者の目を楽しませてくれます。
開花が終わると、アサガオは次世代を担う種子を作り出すために多大なエネルギーを消費します。
このため、長期間にわたってアサガオの花を堪能したい場合は、花が終わった後の花殻を定期的に取り除く努力が求められます。少し手間はかかるかもしれませんが、持続的な美しさのためには必要な作業です。
アサガオの適切な剪定方法
アサガオを美しく保つための剪定には、「摘心」と「切り戻し」の二つの方法があることを覚えておきましょう。
摘心法は、苗を地に植えてから本葉が７枚程度になった際、上部の成長点を摘むことで側枝の発達を促します。
一方で、切り戻しは、茎や蔓の伸びが過剰な場合やダメージを受けた部分を見つけたときに、適宜剪定して形状を整えることです。
開花期間には、枯れた花を取り除くことで、次の花の咲きやすい環境を作り出します。
アサガオの増殖方法について
アサガオは、種取りや挿し木、そして接ぎ木の３つの方法で繁殖させることができます。
接ぎ木には、アサガオと同じイポメア科に属するサツマイモの茎を用いますが、少々専門技術が必要とされる場合があります。
最も手軽な方法は、花が終わった後に種を収穫することです。ただし、ノアサガオのように種子をつけにくい品種には、挿し木が推奨される方法です。
アサガオの挿し木の最適な時期と実践手順
アサガオを増やすための挿し木作業は、６月が最も良い時期です。
生育が活発な茎から健康な挿し穂を選び、取ります。大きめの葉があれば、水分の蒸発を抑制するために半分程度にカットしてください。
挿し穂を切り取ったら、一時的に水に浸し、その後水切れのしないよう湿ったバーミキュライトなどの有機質を含まない用土に挿し木を行います。
土の乾燣に注意しながら管理し、茎が元気な姿を維持していれば、新しい葉が展開するサインが見られるでしょう。
新しい葉が見えた場合、根付きの成功が期待できます。その後は苗を鉢に植え替え、続けて育成していきます。
日々の監視が、害の予防に繋がります
アサガオを蝕む病害には、葉に出現する点状の「斑紋病」や、葉表面に白いカビが生えたような「うどんこ病」、またウィルスが原因の「モザイク病」が挙げられます。
斑紋病とうどんこ病には薬品による治療が有効ですが、モザイク病に侵されたアサガオは残念ながら撤去してしまう他ありません。
アサガオに見られる虫害として、特に夏場の暑く乾燥した条件下でのベランダでの栽培時には、ダニ類が増えやすいことがあります。
ダニの発生を見つけた場合、逆さまにした葉に水を強くかけることで対処しましょう。
アブラムシが付いていることがあれば、手で取り除くのが良いでしょう。また、ヨトウムシの場合は発見次第処分する必要があります。
日々植物の変化を注視し続けることで、こうした病気や害虫の被害を最小限に食い止めることができるのです。
アサガオとマッチする寄せ植え相手
周囲に巻き付きながら成長していくアサガオは、他の植物との寄せ植えにおいて少々難易度が高いかもしれません。しかし、実際にはチャレンジしやすく、特に大容量の鉢で色や形の異なる複数のアサガオを組み合わせることがおすすめです。
アサガオが縦方向に美しく成長するための行灯スタイルで植える方法や、西洋風のデザインが特長のオベリスクに巻き付ける手法も面白い装飾になります。
成長する蔓の長さが限られている品種や、下方に向かって茎を垂らすタイプのアサガオも存在します。そういったアサガオと、同じく日当たりを好む植物を組み合わせれば、魅力的な寄せ植えを作ることができるでしょう。
アサガオの気づかいポイント
アサガオの苗は買ってきたらどうする？
アサガオの苗は、すでに花を咲かせている状態で購入することもありますね。さっそく鮮やかな彩りを楽しむためには、どんな手当てが必要でしょうか。
通常、育て方は先に挙げた通りの方法で十分なのですが、購入した鉢植えから根が外に飛び出してしまっている場合は、根が窮屈にならないよう、一回り大きめの鉢に移植することが望ましいです。
この「鉢増し」を行うときは、苗の根鉢を乱暴に扱わず、できるだけその形を保ちながら行いましょう。
茂ってはいるけど花が開かない時は？
アサガオは、時に蔓が勢いよく伸び、葉も密に茂るのに花が咲かないことがあります。これは、成長期に与えた肥料が多く、特に窒素分が過剰だった場合に起こる現象です。
余分な葉が生い茂る一方で、花が咲きにくくなるのです。また、アサガオは短日植物であり、長い昼の間は花芽を作り出さない傾向があります。
夏至を境に日が短くなってくると、アサガオはようやく花芽を形成し始めます。
なお、夜間まで人工照明の光が強い環境では、自然界の周期を狂わせ、結果として花が咲かない原因にもなります。この点にも配慮して、夜間は暗闇の環境を保つようにしましょう。
