ツルニチニチソウと聞くと、その愛らしい青い花に目を奪われる方も多いでしょう。観賞植物として一見無害に見えますが、実際はいくつかのリスクが伴います。
かといって、適切な管理をすればトラブルなく楽しむことも不可能ではありません。
さわやかなブルーの花が風情を添えるツルニチニチソウは、年輪を重ねた木々の周囲や、素地がむき出しのスペースによく植え込まれます。
あくまで地植えされることが多いこの植物、しかしながら時に「危険だ」との声も上がります。
そこでこの記事では、以下のポイントについて明らかにしていきます。
- ツルニチニチソウがもたらすリスクとは
- なぜそれでも栽培者が後を絶たないのか
- 安心して栽培するためのポイント
植物に詳しい私が、分かりやすく解説していきますので、ぜひご一読ください。
植栽禁止!ツルニチニチソウが避けられるべき3つの理由
ツルニチニチソウは植えるべきではない植物としてしばしば挙げられます。主な理由には以下の3点が含まれます。
- 驚異的な繁殖能力
- 根絶が難しいこと
- 有毒な成分(アルカロイド)を含んでいること
ここでこれらの理由について詳細に説明します。
ツルニチニチソウの驚異的な繁殖能力
多くの人が植栽した後に驚くのがツルニチニチソウの繁殖力の高さです。
わずかな苗を植えたはずが、気付けば広範囲に根を張り、圧倒的な存在感を放っていることに戸惑いを感じることでしょう。
まるで、他の植物の生育スペースを侵害し、園芸の世界における略奪者のように庭を占領していきます。
急激な増殖メカニズム
ツルニチニチソウは地面を這うようにして茎を伸ばし、その節ごとに新たな根を生やして拡がっていきます。
節から発根した部分が新たな個体になることで、継続的にその数を増やしていくのです。
種から発芽して増える植物も数多く存在しますが、ツルニチニチソウの繁殖の速さはひときわ目立っています。
外来種としてのリスク
実はツルニチニチソウは、「生態系被害防止外来種リスト」に名を連ねる「重点対策外来種」の一つです。
日本固有の生態系に負の影響を与えかねない存在であると認識されています。こんな事実を耳にすると、庭への植栽をためらう方もいるかもしれません。
しかし、市販されていることからもわかる通り、自宅の庭での栽培については禁止されていないため、個人が楽しむ分には問題ありません。
ツルニチニチソウの根絶が難しいこと
ツルニチニチソウが庭を覆ってしまうという問題は頭を悩ますものですが、地上部分を取り除いただけでは、地中に残る根から再び新たな芽が生えてきます。完全にツルニチニチソウを撲滅するためには、
- 除草剤を駆使して根本から駆逐する
- 掘り起こして根っこごと取り除くなどの手間のかかる方法が必要です。
ツルニチニチソウの植栽を後悔し、他人に「この植物を植えてはならない」と警鐘を鳴らす声も多いようです。一度地に根を下ろすと、その生命力の強さから「手に負えない」と感じさせられるでしょう。
自然に枯れることは期待薄
ツルニチニチソウは、常緑性を持つ多年草であり、以下のような特性を持っています。
- 寒さに強い耐寒性
- 陰にも強い耐陰性
- 繁殖力の強さ
これらの特性により、ツルニチニチソウは過酷な環境下でも容易には枯れることはなく、放置しても自然消滅することはほとんどありません。
ツルニチニチソウのアルカロイドの毒性
ツルニチニチソウは、アルカロイドと呼ばれる成分を含んでおり、これには毒性があることが知られています。
多くの人は「毒」と聞くと感じる不安感から、「子どもやペットがいる家庭では育てるべきではない」と考えるかもしれません。
しかし、実際にはツルニチニチソウに含まれているアルカロイドはごく少量であり、通常は大量摂取しない限り健康へのリスクは小さいとされています。
実際に蓄積されることなく、小さな子どもや犬が遊び半分で少し口にしても害はほとんどないでしょう。
これを裏付けるかのように、ツルニチニチソウによる事故や被害の報告は、インターネット上の検索でもほとんど見つかりません。
※ 実際に事例を探してみても、ツルニチニチソウが原因のトラブルについての記録は見当たらないことが多いです。
ツルニチニチソウを植え続ける理由
マイナスイメージが指摘されているにも関わらず、グラウンドカバー植物としてツルニチニチソウは多くの愛好家に支持されています。
植える人たちも負の評価を知らぬわけではありません。しかし、彼らを惹きつけているのは、次のような好意的な側面でしょう。
- 花言葉の肯定的なメッセージに魅力を感じて
- 古代ヨーロッパに伝わる言い伝えが背景にあるため
ツルニチニチソウの魅力的な花言葉
ツルニチニチソウに託された花言葉は以下の通りです。
- 楽しい思い出
- 優しい追憶
- 生涯の友情
- 初恋
このように、すべてが前向きな意味を持っていて、一切の否定的な要素が含まれていません。特に「楽しい思い出」という花言葉は、著名な哲学者ジャン・ジャック・ルソーにちなんでいます。
美しく花を咲かせるツルニチニチソウは、これら素晴らしい花言葉を持つため、庭に植える際の意欲をかきたてられるでしょう。
ヨーロッパの伝承とツルニチニチソウ
昔のヨーロッパでは、不変の緑を誇るツルニチニチソウを持つことで以下の恩恵があるという伝承がありました。
-
- 邪悪な力を寄せ付けない
- 繁栄や幸運を引き寄せる
この伝えは、ツルニチニチソウが常緑植物であり、ヨーロッパのさびしい冬でさえも生命力あふれる緑を保ち続けることに由来しています。人々はその姿から「永続する生命」や「神秘的な力」を宿しているとさえ考えていたのです。
日本においても、冬の寒さに負けることなく、枯れゆく植物に対して色と活力を添えてくれるツルニチニチソウ。それは冬の広場に華をもたらし、植栽する際のひとつの魅力となっているのです。
庭園でのツルニチニチソウの安全な栽培法
ツルニチニチソウのリスクを承知の上で、それでも愛でたいと思われる方へ。 私が提案する庭での無害な育て方をお伝えします。
- 定期的な剪定を心掛ける
- 鉢植えにして管理する
- 剪定作業をする際には手袋を使用し、作業後は必ず手を洗う
ツルニチニチソウの剪定方法
地面に植えてグラウンドカバーとして利用する際は、ツルニチニチソウの茎を定期的に剪定することが重要です。この植物は、ツルを伸ばした先から新しい根を展開し広がっていきます。
ですが、伸びた茎を適宜カットしてやることで、その拡散を抑えることができます。切り落とした茎が新たな根を張らないように、しっかりとゴミ袋に入れ、燃えるゴミとして捨てましょう。
※注意:ツルニチニチソウは生態系に悪影響を与える恐れがある外来種リストに掲載されている植物です。自分の庭から他所に広がらないように、慎重な管理が求められます。
区切られたスペースや鉢植えでの栽培
ツルニチニチソウは、成長を適切にコントロールすれば、問題を引き起こす植物ではないといえます。以下の方法で管理することが大切です。
- しっかりと石などで区切られた範囲内に植える
- 鉢植えやプランターを利用して育てる
このように意図的に、「ここまでの範囲でしか成長させない」という明確な制限を設けることで、その強い繁殖力を恐れることなく、安心して栽培することが可能です。
ツルニチニチソウの取り扱い時の注意点
ツルニチニチソウに含まれるアルカロイドは、一般的に触れただけでは大多数の人にとって無害です。
しかし、皮膚が敏感な方や手荒れがしやすい方は、ツルニチニチソウを取り除く際や剪定の作業をするときに、安全を期して手袋を着用することが推奨されます。
作業後は、ツルニチニチソウとの接触部分を石鹸で洗い流すことで、皮膚への刺激を予防しましょう。
まとめ
なぜツルニチニチソウの植栽を避けるべきなのでしょうか。その理由は以下の三つに集約されます。
- 強い繁殖能力
- 除草作業の難易度
- 植物自体が持つ毒性
しかしながら、花言葉が素敵である点や、ヨーロッパにおいて幸運を呼ぶシンボルとして親しまれている事実もあり、知識を持った上で育てる愛好家は少なくありません。
適正な方法で育てることで、その魅力を十分に引き出すことができますので、チャレンジしてみるのも一考です。