皆さんも経験があるかもしれませんが、ほうれん草を食べた時に「なんだか苦い…」と感じることがありますよね?さらに、食べると歯にザラザラした感触が残って、これがまた不快。
大人でも食べる気が失せるほどです。ましてや子供は一口で「いやだ!」と言ってしまうことも。こんな時、果たして食べても問題ないのか、もしかして腐っているのではないかと心配になります。
そこで野菜に詳しい友人に尋ねてみたところ、「ほうれん草は苦くても食べられるし、腐敗しているわけではない」との答えを得ました。
しかし、普段食べているほうれん草が苦くないことを考えると、ふと「なぜたまに苦いほうれん草に出くわすのか?」と疑問が湧きます。
そこで友人にさらに詳しく聞いてみたところ、以下のような情報を教えてもらいました。
- 苦いほうれん草が出現する原因とその理由
- ほうれん草が苦い時の適切な対処法
- 子供でも喜んで食べられるほうれん草のアレンジレシピ
このような知っておくと便利な情報をここで皆様にも分かち合いたいと思います。
苦いほうれん草は食べても大丈夫だし腐ってない!
結論から言うと、苦いほうれん草を食べても大丈夫です。
大量に食べない限りは健康被害はありませんから、少しくらい食べても問題はありません。
また、腐っているわけでもないので、腹痛や下痢などの食中毒を起こすこともありません。
ほうれん草の特有の苦味、その正体はシュウ酸
ほうれん草が持つ独特の苦みは「シュウ酸」が関係していることが分かっています。実はこのシュウ酸が、私たちが味わう「苦さ」や「えぐみ」、さらには「歯がギシギシと不快になる」感覚の全ての背後にあるのです。
ほうれん草の煮物でよく聞く「アク」とは、このシュウ酸を含んでいる部分のことで、適切に取り除かないと苦味やえぐみが強くなるものです。
加えて、口内のカルシウムと結びついて「シュウ酸カルシウム」に変わることがあり、その変化がギシギシとした感覚のもととなります。
シュウ酸はレタスやブロッコリー、たけのこ、コーヒー、緑茶、紅茶など多くの食品に含まれていますが、中でもほうれん草の含有量は格別に多いとされています。
ほうれん草過多が引き起こす健康リスク
まず、少量の苦いほうれん草を摂取することによる健康上の懸念は一切ありませんのでご安心ください。しかし、苦味の強いほうれん草を連続して大量に摂る習慣があると、尿路結石を発症する可能性が出てきます。
この問題の根本にはシュウ酸が関係しており、ほうれん草に含まれるシュウ酸は結局のところ排尿時に体外に排出されることになります。
そして、この過程でカルシウムと結合しシュウ酸カルシウムを形成するのですが、これが尿路結石の素となるのですね。
念のため付け加えておくと、シュウ酸は人体にとって有益な栄養素とは言えません。従いまして、以下の二点を念頭に置いて摂取することをお勧めします。
- 特に苦みが強いほうれん草は避ける
- ほうれん草を食べる際にはアク抜きを確実に行う
これらの対策を講じることで、尿路結石のリスクを減らすことができます。
生食不適切な一般ほうれん草への注意喚起
「ほうれん草のサラダ」がメニューや料理サイトで目にすることが一般的になり、キャベツやレタスに代わる新しいサラダの素材として親しまれています。
その独特な柔らかさが多くの人を魅了していますが、注意が必要なのは、通常のほうれん草は生で食べるべきではないという点です。
従来のほうれん草にはシュウ酸の量が多いため、加熱せずに食べると尿路結石を誘発する恐れがあるのです。
サラダ用に提供されるほうれん草は、特に茎が赤い「サラダほうれん草」と呼ばれる種類で、シュウ酸が少ないため安心して生で楽しめます。
生のほうれん草を食べたい場合は、生食できることが確認されているサラダほうれん草を選びましょう。このタイプのほうれん草は、また「赤軸ほうれん草」とも呼ばれています。
ほうれん草の苦味の要因とその生じる背景
ほうれん草の苦みが生じる主な原因は、シュウ酸の存在にあります。シュウ酸を豊富に含んでいるほうれん草は、より一層その苦みが際立ちます。
では、シュウ酸を多く含むほうれん草がどのようにして生育するのかというと、それには農地への「窒素肥料の過剰な施用」が関わっていると考えられています。
ほうれん草の栄養源となる肥料の種類について
ほうれん草にとって不可欠な肥料には、主に以下の3つが挙げられます。
- 窒素
- リン酸
- カリウム
これらの要素は、それぞれ独自の重要な働きを持っています。例えば窒素は、ほうれん草の葉の成長を促進し、植物が充実した緑の葉をより多く、そして素早く生産するのに役立ちます。
窒素肥料をたっぷりと用いることで、ほうれん草は鮮やかで立派な葉を茂らせ、収穫量も増加するため、農業を行う人々にとっては多くの利点があると言えるでしょう。
青々とした大きなほうれん草の意外な秘密
多くの家庭菜園で使用される肥料には、窒素、リン酸、カリウムがバランスよく含まれていることが一般的です。これらの成分は植物の成長に欠かせないものですが、専門家であるプロの農家が市場での競争力を強化するために行う育成方法は異なります。
彼らは特に窒素肥料の投入量を増やすことで、一見すると非常に健康的で栄養豊富そう見える、大きな葉を持つほうれん草を栽培しています。
しかしこのようにして育てられたほうれん草には、シュウ酸の量が多く蓄積されており、食べるとその苦さが口に広がる原因となっています。
消費者の多くは、このような背景を知ることなく、スーパーなどで売られているほうれん草の中から、無意識のうちにより青々とし大きなものを選んでしまいがちです。
結局、市場に苦いほうれん草が多く出回ることに、消費者自身が関与しているといっても過言ではないでしょう。
なお、情報によると、現在栽培されているほうれん草は過去と比べてシュウ酸の含有量が減少しているとのことですので、苦味について心配する必要はあまりないかもしれません。
ほうれん草の苦みを減らす方法:アク抜きのテクニック
多くの方が、ほうれん草特有の苦みを感じると食べずらさを覚えることがあるのは周知の事実です。
しかし、この苦味を主に引き起こしているシュウ酸は、幸いにも水になじみやすい「水溶性」を持っています。
それゆえ、伝統的な「アク抜き」の手法を用いることで、水中に解き放つことができるのです。これには俗に「下茹で」とも呼ばれる手順が存在し、具体的には3つの方法があります。
ほうれん草の塩ゆでの仕方
手始めに、誰もが簡単にできる塩ゆでの手順をご紹介します。
- ほうれん草の根っこを取り除き、交差に切り込みを入れます。
- ほうれん草を流水またはボウルに溜めた水で丁寧に洗います。
- お鍋にお湯を沸かし、適量の塩を加えます。
- ほうれん草の根元を先に入れ、茎が柔らかくなったら葉の部分も沈めます。
- 総ての部分を約1分間湯煎した後、ざるに上げます。
- 冷水をたっぷりはったボウルで冷ます。
- 最後に水気をしっかりと絞れば完成です。
電子レンジを使用した方法
忙しい時でも電子レンジを使えば手軽に調理が可能です。プラスチック製であってもガラス製であっても構いませんので、耐熱性のある容器を一つ準備しましょう。
- ほうれん草を容器に収まるサイズに切ります
- 耐熱容器の中に入れ、蓋をオフセットして電子レンジに設置します
- 1分間加熱します
- 耐熱容器に水を加え、しばらく置いて冷まします
- 取り出し、手で水気を絞り出せば完成です
加熱時間は、使用するほうれん草の量や電子レンジのワット数に応じて適宜調整してください。
※例えば800Wの電子レンジでは1束を1分、600Wでは約2分が目安です。
にがりを使ったほうれん草のアク抜き
ほうれん草の不快な苦味やえぐみを抑えるのに効果的な方法の一つが、にがりを用いた茹で方です。通常の塩茹での手順に従いながら、塩の代わりに液体状のにがりを大さじ1程度入れて調理します
。この方法で茹でた場合、にがりが含むマグネシウムとほうれん草内のシュウ酸が反応し、「シュウ酸マグネシウム」へと変わります。
この化学変化によって、シュウ酸由来の苦みが消失し、また吸収が妨げられることで、尿路結石の発生リスクも抑制することが可能になります。
※にがりについての注釈:にがりとは、海水から塩を抽出した後に残る液体であり、主要成分は苦味を持つ「マグネシウム」というミネラルです。
子供も喜ぶ!苦味を感じさせないほうれん草レシピ
ほうれん草は、しばしばシンプルに醤油をかけて味わったり、おうどんの上にのせたりして楽しまれています。
だけど、このような食べ方はほうれん草本来の苦さに直面するため、さほど好まれない子供もいますよね。
苦味を目立たせないためには、より強い風味のある味付けでマスクするか、油を使った調理法を採用すると良いでしょう。例えば、次のようなレシピを試してみてください。
おすすめの苦みの少ないほうれん草の調理法
- 濃厚な味付けが特徴のソテーや炒め物
- クリーミーなグラタンやカレーにほうれん草を混ぜる
- チーズやベーコンと合わせてパスタの具として活用
このようにアレンジすることで、ほうれん草の苦手なお子さんでも美味しく野菜を食べることができますよ。
ほうれん草とベーコンのバター炒め
シンプルで栄養たっぷりの一皿、ほうれん草とベーコンを香り高いバターでじっくり炒めた定番ソテーです。風味豊かなしめじをはじめとするキノコ類をプラスすることで、さらに深みのある味わいに仕上がります。
ほうれん草のグラタン
少し手間が必要ですが、子どもたちが喜ぶお馴染みのメニューといえばグラタンですね。動画で紹介されているレシピにはゆで卵が使われていることがありますが、私個人としては、その工程を省略して調理しています。
ほうれん草のドリア
お子様にも喜ばれるほうれん草のドリアのレシピです。クリーミーな味わいで、ほうれん草特有のほろ苦さも感じさせない美味しさです。また、「おかずとご飯」が一緒になっているので、調理を行う際も手間が省けます。
苦みが少ないほうれん草の選択法と購入テクニック
市場でほうれん草を選ぶ際、苦味の少ないものを見分ける方法があります。その選択方法と購入時のポイントについてご紹介します。
ほうれん草には2つの種類が存在する
ほうれん草は、2つの主要な種類、「東洋種」と「西洋種」に分かれています。東洋種は西アジアを起源とし、中国を経て日本にもたらされた品種で、特徴としては葉が薄くアクが比較的少ないです。
一方、西洋種は西アジアからヨーロッパに広まった品種で、葉が厚くアクが比較的強い傾向があります。
アクが少ないほうれん草を選びたい場合、東洋種が良い選択肢と考えられがちですが、市場に出回っているほうれん草の多くは、東洋種と西洋種の良い特性を併せ持つ「交配種」が一般的です。
※なお、西洋種は病害虫に抵抗力があるという利点があり、そのために交配が行われているようです。
赤みを帯びた根元のほうれん草を選ぶこと
現在市場に並ぶほうれん草は、ほとんどが交配種です。しかし、中には東洋種の特性を多く残しているものがあり、特に目を引くのは根元が赤く色付いているタイプです。
東洋種の特徴を色濃く受け継いでいるため、これらのほうれん草はアクが少なく、苦みも控えめで味わい深いのが特徴です。
赤い根元にはマンガンが多く含まれており、栄養価が高いため、捨てずに食べるのがおすすめです。対照的に、西洋種のほうれん草の根にはあまり色が付いていないことが一般的です。
まとめ
ほうれん草の苦みに関する様々な情報をお届けしましたが、最終的なポイントをまとめておきましょう。
- 苦味のあるほうれん草でも、腐敗していなければ少ない量ならば安心して食べられる
- ほうれん草の苦味の主な原因はシュウ酸によるもの
- シュウ酸を大量に摂取すると、尿路結石になる恐れがあるので注意
- 生で食べるほうれん草は、サラダ用とされる種類のみが推奨される
- 肥料としての窒素の過剰な使用によって、ほうれん草が苦くなることがある
- アク抜き処理を行うことで、シュウ酸を減らし苦味を抑制することができる
- 購入時には、根元の赤い色が濃いほうれん草を選ぶとよいかもしれない
若干の苦味があるほうれん草でも、害はなく、市場に流通しているほうれん草は多少苦味があることもあります。アク抜きを適切に行い、お子さまも食べやすいような味付けや料理法を探ってみてください。