日本にシャーマンは実在するのでありますか?そうだとすれば、彼らは一体どのような存在なのか。まず初めに、「日本におけるシャーマンの定義」について掘り下げてみます。
その後、我が国の各地で活動する多彩なシャーマンたちにスポットをあて、彼らの存在に迫ります。この文を最後まで読了すれば、ここ日本に息づくシャーマンたちの実像について、より深い理解が得られることでしょう。
日本のシャーマン・巫女について
日本におけるシャーマンの理解を深める上で、先ず「巫(かんなぎ)」という概念についてご説明いたします。
巫(かんなぎ)とは
「巫」とは、神聖な仕事を行う人々のことを指し、また「覡(ふげき)」とも称されます。これらの人々は神と人間との間に立つ役割を担い、神の意志を伝達することが使命です。
女性の場合は「巫」と表現されることが多く、男性は「覡」または「祝」と呼ばれることがあります。
日本固有の巫を指し示すとき、「かんなぎ」という言葉が用いられます。
日本の伝統においては、巫の役目を果たす人々は女性が多数を占め、「巫女(みこ、ふじょ)」と一般的に呼ばれることがしばしばありました。
従って、女性の巫を単に「巫女」と言い換えることができるわけです。
巫の本質は「神降ろし」や「神懸り(かみがかり)」といった特別な儀式にあるとされています。
神道における初期の慣習では、神を鎮めるために様々な儀式が実施されており、祈祷師や神職が神の依り代となり、自らの体を通じて神を迎え入れる聖なる儀式が存在したのです。
そのような祭祀を執り行う女性が「巫」と呼ばれ、尊敬されていたのです。
巫女の現代的役割
現代では、「巫女」というと、しばしば神社の神職の手助けをする女性を指すことが一般的です。
通常、神社において神主のサポートを行ったり、御守りの販売を手がけたりすることで知られています。
しかし、かつての神を降ろす儀式を行う存在とはまた違ったイメージを私たちは持っています。
そうした今日における巫女のイメージは、一体どのような経緯を経て形作られたのでしょうか。
巫女の二つの類型
一般的に巫女は、「巫系巫女」と「口寄せ系巫女」の二つのカテゴリーに区分されることがよくあります。ここでは、その類型に基づいて、現代における巫女のイメージがどのように築かれてきたかについて探ります。
神を敬い仕える神社巫女と、霊の顕現を担う巫女について
私たちは、神々に仕え、神意をこの世界に伝える女性にスポットライトを当ててきました。
柳田國男は、彼が記述した『巫女考』という著書において、日本における巫女の役割を大きく二つのカテゴリに分類しました。
ひとつは神道における神社で務めを果たす女性達であり、もうひとつは霊媒として活動し、自らの身を通じて神の声を伝え、さまざまな儀式を遂行する女性達です。
以下、この分類を踏まえて各グループについての探求を進めていきます。
神社に仕える巫女の変遷
神道の儀式に従事する女性集団、それが巫女です。時代に応じて彼女たちの果たす役割は変化を遂げてきました。
たとえば古代では、シャーマニズムの影響下、巫女は卑弥呼のように極めて重要な存在でした。しかし明治に至り、神職が男性に限定される時代もありました。
それにより一時、女性の神職は消失し、巫女はあくまで補助的な立場に甘んじるようになります。だが第二次世界大戦を経て、再び女性神職が認められ、巫女も広い意味で女性神職の一翼を担うようになりました。
また、巫女が女性であるという事実から、彼女たちのイメージも大きく変わっていきました。
かつて「神子」とも呼ばれた巫女は、神々の配偶者という位置づけされていました。特に古代では、斎王として神様に仕える未婚の皇族の女性もおり、結婚しないことが一般的でした。このような背景から、巫女には性的な要素が結びつけられることも珍しくありませんでした。
しかし、仏教が広まるにつれて、その性的なイメージは抑制される方向に向かいました。その代わりに、処女性を重視する傾向へと移行していきました。時を経て、巫女は神社という聖域の象徴としての立ち位置を確立していきます。
現代においても、これらの歴史的な背景が影響し、主に若い未婚の女性が巫女として働く傾向がありますが、結婚を機に役割を退くことが一般的なようです。
霊との橋渡しをするシャーマンたち
一部の巫女は、霊を自分の体内に降霊させることや、あの世とこの世をつなぐ重要な役割を果たしています。
青森県に見られるイタコや沖縄に伝わるユタがその典型です。このタイプの巫女の能力は、往々にして家族を介して受け継がれることが多いですが、時には成人してから神のお告げを受け取り、降霊の才能が開眼する女性も存在します。
これらの女性たちは、シャーマンと称されることもあります。厳密には、神社の巫女と霊を招くシャーマン型の巫女とに区別があります。こうしたシャーマンや巫女達についての学問的な探求を続けていきたいと思います。
地域ごとのシャーマン・巫女に関する考察
これまでは巫女に関する様々な知識を解説してきましたが、巫女には「巫系巫女」(今日私たちがよく目にする巫女さん)と「口寄せ系巫女」(シャーマン)の二つが存在しているということをお伝えしました。
次に、日本国内で見られるシャーマン(巫女)の実際の事例について詳しく見て行きましょう。
東北地方のシャーマニズム:イタコとカミサマ
東北地方には特有のシャーマン・巫女文化が根付いており、特にイタコとカミサマと称される方々がいます。
イタコとは?
イタコは特に青森県の恐山でその存在がよく知られている巫女のことです。盲目であることが多く、以下のような特徴が挙げられます。
- 故人の魂を呼び出すことができる
- 霊媒師としての役割が顕著である
- 視覚に障害のある女性が巫女として活動するケースが多い
- 故人の霊を降ろす儀式を執り行う
カミサマとは?
対して、カミサマは青森県の津軽地方で親しまれている巫女を指します。彼女たちは以下の特長を持ち、一代でその能力を終えることが多いです。
- 独自の霊感や神による啓示を受ける
- 守護神との交信を通して相談者の悩みにアドバイスを提供する
- 憑依されたものの除霊
- 病気の治癒活動
- 神を降ろす儀式を行う
イタコとカミサマは、ともに東北地方に伝わる口寄せの巫女ではありますが、その活動内容や特徴には明らかな違いが見られます。イタコは死者の魂に焦点を当て、カミサマは神々との交信に重きを置いています。
続いて、関東地方と京阪地方における巫女の呼称について見ていきましょう。
関東における巫女の呼称と意味
民俗学者の柳田國男が指摘する通り、呼び名が同じでも地域によってその意味は異なることがあります。具体的に関東地方での巫女の呼称は次のとおりです:
- ミコ:巫系の巫女
- イチコ・アズサミコ:口寄せを行う系列の巫女
京阪地方におけるイチコ
関東地方と違い、京阪地方特有の巫女のことを「イチコ」と呼びます。このイチコは巫系の巫女にあたります。
さて、次に沖縄地方で見られる口寄せ系の巫女に対する理解を深めていきましょう。
沖縄の霊能者:ユタとノロの役割
同じく口寄せを行う巫女であるユタとノロですが、担っている役割は異なります。
ユタ
ユタは民間の霊的な導き手として活動しており、沖縄の日常において欠かせない存在です。その活動には以下のようなものがあります。
- 占いによる助言
- 先祖への供養行事
- 不幸や災厄を避ける儀式
- 病気の回復を祈る儀式
ノロ
ノロは村の神事を主宰する女性の祭司グループのリーダーで、琉球の神話に登場する神々との意思疎通を図ります。昔は公的な役職として位置づけられていたものの、現代ではその地位はほとんど失われています。
ユタとノロはそれぞれに異なる役割を担い、沖縄固有のシャーマニズムの伝統を維持し続けています。
日本の巫女とシャーマンの概要
神社を支える女性たち
かつてはシャーマンとしても数多くの神秘的な役割を果たしてきた巫女ですが、今日では神職の補佐を行う存在として一般に認識されています。
霊媒としての巫女
霊界の声を聞き、神々の力を伝えるなど、シャーマニズムを色濃く残す巫女もいます。特に、青森県の恐山で見ることができるイタコがその代表例です。
地域ごとのシャーマンたち
- 東北地方のイタコやカミサマ
- 関東地方にはミコ、イチコ、アズサミコがいる
- 関西地方ではイチコと呼ばれる者が存在する
- 沖縄ではユタやノロが伝統を守っている
普通の神社で仕事をしている巫女さんから、テレビでも時折目にするイタコのようなシャーマンまで、さまざまな形態が存在します。
本稿を通じて、これら「巫女」という言葉で総称される存在の変遷や、それぞれの特色についての理解が深まることでしょう。